定例会開催報告 第29回『誰のための在宅ケア?!~困難事例を通じて自分のケアの姿勢を振り返る~』
皆さまこんにちは。
当会幹事の成田元気です。
この度、平成26年12月15日に開催しました第29回定例会の報告を致します。
今回のテーマは「誰のための在宅ケア?!~困難事例を通じて自分のケアの姿勢を振り返る~」と題しまして、本輪西ファミリークリニックの佐藤弘太郎先生より事例紹介と臨床倫理の4分割表を用いた考え方についてお話し頂きました。この臨床倫理の4分割表とは、事例や症例の問題について考える際に、4分割表というものへ当てはめながら考える方法で、その問題点を広い視野から眺め、整理する事が出来るものであり、多職種間の討論などでも枠組みとして活用出来るものであります。
具体的には
1.医学的適応(恩恵無害)
【診断と予後、治療目標の確認、医学の効用とリスク、無益性(Futility)】
2.患者の選好(自己決定)
【患者の判断力、インフォームドコンセント、治療拒否、事前の意思表示、代理決定】
3.QOL(高福の追求)
【定義と評価(心理、社会、身体、魂)、偏見の可能性、誰がどのように決定するか、影響を与える因子】
4.周囲の状況(公正と効用)
【家族や利害関係者、守秘義務、経済、施設方針、教育、法律、宗教、その他(情報開示)】
に分かれており、その方の状況や問題点をこれらの項目に分けて考えて行きます。
私達は自分の得意分野(専門性)の部分に関しては良く見る(診る)ようにはしていても、限られた時間内での関わりの中で全てを把握する事は困難です。そして、実際に生じる問題では様々な要素が複雑に絡み合っている場合が多い状況です。そんな時にこの表が活躍するという訳です。今回の事例においても、この4分割表を用いることで、十分に確認が出来ていなかったところが見つかるなど、問題解決に向けた糸口を発見する事が出来きたとの事でした。
地域包括ケアシステムの構築に向けて「その人が住み慣れた地域でその人らしく生活する」ためには、こういった広い視点での関わりと多職種との協働が必要不可欠であると思います。今回、困難事例をご報告して頂いた事により、新たな視点や関わりなどを経験するとても良い機会となりました。普段からこのような広い視点で利用者様や患者様と関わり、困難となってしまった場合には、皆の力をより一層合わせ協力出来る、そんなチームをこれからも増やして行きたいですね。